海外で子供が生まれたら必要な手続きのひとつに日本に出生届を提出して戸籍を取得するということがありますね。
日本に住んでいれば生まれてから2週間以内に役所に出生届を提出します。
しかし海外から日本大使館、領事館を通して手続きをすると方法や提出期限、提出後戸籍の登録までにかかる時間も異なります。
中でも一番ネックになるのは提出してから2~3ヶ月かかるという時間的制約ではないでしょうか。
海外で出産し、赤ちゃんの日本のパスポートを作るには、まず日本の戸籍に登録することが不可欠です。(※)
産後間もない時期にパスポートが必要な事情もありますから、もっと早く日本の戸籍に登録されればいいのに…と思う方も少なくないでしょう。
そこで日本の出生届をより早く戸籍に反映させる方法を私の経験もまじえて紹介します。
(※子供が多重国籍を持つ場合、日本以外の国のパスポートを取得して国家間の移動は可能ですが、日本に出入国する場合は原則日本のパスポートを使います。)
- 海外出産し、赤ちゃんの日本の戸籍を早く登録したい人
- 現在妊娠中で海外出産後に一時帰国を考えている人
- 海外で出産後、早い時期に本帰国の可能性がある人


海外在住者が日本国籍の出生届を提出

海外で出産し、子供に日本国籍をもたせるには生まれた日を含めて3ケ月以内に大使館・領事館へ出生届を提出する必要があります。
書類を揃えて提出すると在外公館経由で出生届が日本に送られ、本籍地の役所で手続きが行われます。
この場合、戸籍に反映されるまでに大体2~3ヶ月かかります。
- 管轄の領事館から日本の本籍地の役所に郵送で届くまでに1~2ヶ月
- 役所で戸籍に登録して反映されるまでに1~2週間
状況によって早く手続きが完了したり、また遅れたりもします。新型コロナウイルスの影響で手続きや配送事情が変更されていることもありますので、その都度最新の情報を確認するようにしてくださいね。
提出後に数カ月かかると聞くと随分時間を要すると感じますね。
冒頭でも述べた通り、赤ちゃんのパスポートを発行するためには日本の戸籍に登録されることが不可欠です。
出産した国でしばらく過ごす予定ならば問題ありませんが、パスポートを使う日が差し迫っている場合は、早く、そして確実に取得したいものです。
私はアメリカで2回出産し、第一子が生後4ヶ月のときに一時帰国、第二子が生後2ヶ月のときに本帰国をしました。
日本大使館、領事館を通す手順では日本に帰国する日までにパスポート取得が間に合わない、ということでより早く日本の戸籍を反映させる方法を検討しました。
それは日本の家族または本籍地の市区町村役所に郵送で出生届を送って提出することです。
大使館や領事館の案内にもその旨が記載されています。
大使館の戸籍に関する案内の引用
日本の本籍地役場に郵送または親族経由で届け出ることもできます。詳しくは,本籍地役所の戸籍係へ直接ご相談ください。
特にお急ぎの方は,本籍地役所の戸籍係にご相談の上,日本へ直接届け出ることをお勧めします。届出人が記入し,署名および押印/拇印(ぼいん)した届書を届出人に代わってご家族が窓口に持参する事も可能です。
この方法であれば生まれてから1週間以内に日本の役所に出生届を提出することができました。
では出生届に必要な書類と手続きの方法をみていきましょう。
海外で生まれた子供の出生届に必要な書類

まず、出生届を提出するときに必要な書類は以下の3点です。
- 出生届 原本2通
- 出産立ち会い医師作成の出生証明書 2通 (原本1通、写し1通でも可) ※ または外国官公署発行の出生登録証明書
- 出生証明書の和訳文 原本2通
生まれた場所で公式に発行してもらう出生登録証明書は発行までに数週間から数カ月単位で時間がかかるので、この場合は出産に立ち合った医師に記入してもらう方が早いです。
中には病院独自の証明書を発行しているところもありますが、様式が違ったり、追加情報の資料が必要となる場合もあるので適当ではないでしょう。
出産の立会い医師が日本語の読み書きができるならば、出生届用紙右側の出生証明書欄に直接記入してもらい、署名捺印があれば十分です。
和訳文も必要ありません。
外務省のウェブサイトでは医師作成の出生証明書のうち1通は原本が必要ですが、他は写しでも差し支えないと記載しています。一方、在アメリカ合衆国日本大使館のウェブサイトでは原本2通が必要と記載しています。念のため原本を2通準備するか、提出予定の役所に事前に連絡し、確認しておくことをおすすめします。
私は居住区域の管轄であるヒューストン領事館の案内にしたがって書類を入手し、役所に相談した上で手続きしました。
外務省や大使館、領事館にも案内が記載されています。
出生届提出に必要な書類の入手方法

出生届の入手方法
①大使館または領事館に申請して入手する
在外公館が近くにあれば直接訪問して窓口で手続きが可能です。
近くにない場合でも郵送で請求することができるので安心してください。
- 管轄の在外公館のウェブサイトから申請用紙を印刷し、記入
- 申請用紙、返信用封筒、切手の3点を同封して管轄の在外公館へ郵送
- 在外公館で受領されれば、返信用封筒で自宅に郵送される
在外公館では親子健康手帳(母子手帳)の無料配布も行っていました。
併せて申請し、受け取ると効率的です。
父母双方が日本人の場合と、国際結婚でどちらか一方が外国人の場合は案内が異なります。申請書類に選択する箇所がありますので必ずどちらかに印をつけておきましょう。
私が住んでいたアメリカのヒューストン総領事館では母子手帳を入手するには申請者の日本国籍を証明するもの(パスポート、戸籍謄本、抄本)、滞在許可証(ビザ、永住権)、現住所を証明するもの(運転免許証、公共料金明細など)のコピーが必要でした。他の在外公館でも必要か確認し、持参するのがよいでしょう。
②日本の役所から入手する
日本の役所に相談し、事前入手した書類を使うことも可能です。
本籍地の役所のウェブサイトからダウンロードすれば、わざわざ取り寄せなくとも簡単に入手できますね。
日本の役所から入手する場合の注意点が2つあります。
- 「日本国籍の留保」と「父母の国籍」を記入する欄がない
- 出生届はA3サイズで印刷する
どちらも様式はほぼ同じですが、在外公館から入手する出生届には「日本国籍の留保」と「父母の国籍」を記入する欄があり、日本の役所から入手する書類にはありません。
生まれた子供が複数国籍を持つ場合は忘れずに記入しておきましょう。
医師作成の出生証明書の入手方法
管轄の在外公館のウェブサイトからダウンロードして印刷します。
ヒューストン総領事館の書式はこちらからダウンロード可能です。
上記出生証明書和訳文の入手方法
管轄の在外公館のウェブサイトからダウンロードして印刷します。
ヒューストン総領事館の書式はこちらからダウンロード可能です。
出生届提出に必要な書類の記入方法

出生届の記入方法
- 外国語表記の部分はカタカナで記入
- 押印欄や書き損じの訂正には印鑑または拇印が必要
- 日本国籍を留保する意思表示を記入
- ミドルネームがある場合の日本戸籍への記載方法を決める
届出用紙にはすべて日本語で記入するので、外国語表記の部分はカタカナで記入します。
そして押印欄や書き損じの訂正には印鑑が必要です。
印鑑がない場合は右手親指の押印で構いません。
また、前述したように日本国籍を留保する意思表示の記載も忘れないようにしましょう。
出生地主義の国で生まれた子供や、両親の片方が外国人である子供は多重国籍を持つことになります。
しかし現在日本は単一国籍しか認めていません。
そのため22歳になると日本の国籍を選んで他の国の国籍を放棄するか、日本の国籍から離脱するか選択する必要があります。
その期限までにひとまず日本の国籍も持っておくということです。
もう一点、気を付けるべきことがあります。
ファーストネームとミドルネームがある場合、日本の戸籍にどのように記載するか決めることができます。
ファーストネームとミドルネームを両方届け出るのか、どちらか一方だけ記載するのか選択して記入します。
医師作成の出生証明書の記入方法
- 出産に立ち会った医師自身がすべて記入する
- 情報は正式名称で記入する必要がある
出産に立ち会った医師自身がすべて記入する必要があります。
子供や親の名前、住所など記入する箇所が多いので、事前に記入できる部分は記入して見本を作っておくとお願いするときにスムーズです。
そうすることで間違いも防げます。
ひとつ盲点だったのが医師の名前(print name)の表記です。
最初に記入してもらったとき、ミドルネームが省略されたアルファベット1文字でした。
しかし、正式な名前でなければならないため、入院中に正式名称で新しく書いてもらいました。
病院名や住所なども省略した表記がある場合は十分注意しておきましょう。
上記出生証明書和訳文の記入方法
- 医師が記入した証明書を日本語に訳する
- 誰が訳してもよい
和訳文のフォーマットがあれば医師が記入した証明書を日本語に訳するだけです。
英語の部分はカタカナ表記になります。
また、出生届の記入方法でも触れたファーストネームとミドルネームの記載方法について、出生証明書と日本の出生届の記載が異なる場合は特記事項として示します。
例えば、「英文出生証明書によると子の名は【ファーストネーム ミドルネーム】とあるが、戸籍には【ファーストネーム】と届出する。」と記入します。
手続きをより簡潔かつ迅速に済ませるポイント

1週間という短期間で出生届を提出できた理由は、出産前に手続きを領事館と日本の役所の両方に確認し、書類をすべて準備していたからです。
迅速に手続きを行うことができた要点は以下の6つです。
手続きをより簡潔かつ迅速に済ませるポイント
- 子供の名前は出産前に決めておく
- 書類は出産前に揃えておく
- 日本の役所に海外から出生届を提出する旨を相談しておく
- 書類の事前に記入できる箇所は記入しておく
- 出生証明書の記入は産後すぐ、または退院前までに立ち会い医師に書いてもらう
- 可能であれば役所に相談して下書きを事前チェックしてもらう
戸籍謄本が取得できたら、日本から送ってもらうことで、赤ちゃんのパスポート申請手続きに進めるようになります。
ちなみにこのような方法も考えました。出産後の手伝いに日本から来てくれた家族が帰国するとき、出生届を一緒に持ち帰ってもらうのです。産後4週間以内に帰国するのであれば在外公館に提出するよりは早く提出することができます。
出生届を送る際の輸送手段

最後に輸送手段を紹介します。
海外発送できる機関は複数あり、かかる日数によって料金プランを選ぶことができます。
最短だと1~3営業日内に到着します。
重要な書類ですから追跡機能付のサービスを利用するのがよいですね。
また、住んでいる国によって利用できる機関やかかる日数は違いがあります。
アメリカから日本、日本からアメリカへ輸送できる機関のリストを紹介するので参考にして下さい。
私はアメリカから日本へはFedEx、日本からアメリカへ送るときは日本郵便のEMSを利用しました。
- USPS(United States Postal Service)
- UPS(United Parcel Service)
- FedEx
- DHL
- 日本郵便
- FedEx
- DHL
- UPS
- ヤマト運輸
- 佐川急便
※現在は新型コロナウイルスの影響により、郵送事情も変動的なので、その時にリスクが少ない方法を調べてから利用しましょう
まとめ 海外出産後、日本の出生届を最速で戸籍に反映させる方法
日本の家族または本籍地の市区町村役所に郵送で出生届を送って、より早く出生届を提出し、戸籍を反映させる方法を紹介してきました。
もう一度要点をまとめておきますね。
- 出生届提出に必要な書類は3点(出生届、出生証明書、出生証明書和訳文)
- 出生届は在外公館窓口か郵送で申請、他2つの書類はダウンロードで入手する
- 出生証明書の記入は出産に立ち会った医師がすべて記入する
- 出生証明書の和訳は誰が訳しても構わない
- 迅速に手続きを行うために出産前に準備を完了しておく
- 郵送機関は追跡機能付サービスを選ぶ
実際に手続きを行う際には、事前に在外公館や日本の役所の最新の情報をご確認くださいね。
この記事が海外、そしてアメリカで生活している方のお役に立てれば幸いです。
